人生 あ・ら・か・る・と 年齢を重ねてきた今、昔から大切にしていた記録、メモ、本、レコード、などから、これまでの人生を振り返るエッセイのコーナー「人生あ・ら・か・る・と」です。 掲載は月1回1日。筆者は4部のKOさんです。どんな話題が出てくるか、お楽しみください。 2025/07/02 第8回 メジロ捕り~後編~ メジロは明るくなると、遠州浜の海岸で水浴びをして帰って来る。おとりのメジロが一斉に呼応して鳴くと、サーと群れが松林に降りてくる。(群れは幾組か飛んでくるが、全て降りる訳ではない)。 さて、ここからがドキドキである。 自分のおとりの木にメジロが止まると、息を殺してじっと見つめる。モチを捲いた枝にメジロが止まった瞬間、素早く、なるべく静かに走り降りて、逆さまにぶら下がっているメジロをそっと両手で包み込む様に捕獲する。 同級生であわて者がいて、モチに止まる前にあせって駈け下りて行ったら、木株につまずいて、其のはずみで自分のおとりの木へ体をぶつけ、籠が落ち、おとりは逃げ、モチが頭につき、かかったメジロも飛んでいき、散々な目にあった者がいた。 メジロは、毎回捕れる訳はなく、二~三回に一回、一羽捕れるぐらいだった。 捕獲したメジロは、手拭いで作った袋へそっと入れて持ち帰り、籠に移して、暗い部屋で風呂敷を掛け、一週間程様子を見ながら、明るい場所へ移す。 エサは、糠をフライパンで煎って、庭で育てたしゃもじ菜と川魚の干し物を加え、すり鉢で擦り、水を加え、朝晩作って与える。ミカン、リンゴ、蒸かしたサツマイモを与える時もある。それぞれが、エサを工夫して与えることにより、鳴き声の良さを競う。 丹精込めて育てても、朝、軒先に籠をかけて、学校から帰って見ると、姿が見当たらず、近づいてよく見ると、胴体だけが籠の中に残り、頭が無い。 百舌鳥の仕業である。そうやって友達のメジロも次々と犠牲になり、翌年まで生き残れるメジロは少なかった。 それでも当時の子供にとっては、胸がどきどき、ハラハラする遊びであった。 和合町在住 K・O 記事一覧を見る