人生 あ・ら・か・る・と 年齢を重ねてきた今、昔から大切にしていた記録、メモ、本、レコード、などから、これまでの人生を振り返るエッセイのコーナー「人生あ・ら・か・る・と」です。 掲載は月1回1日。筆者は4部のKOさんです。どんな話題が出てくるか、お楽しみください。 2025/09/02 第12回 「鉱石ラジオが始まりだった」 ~後編~ 鍛治町の松菱デパートの4~5軒行った西隣りに、間口が2間位の「RK商会」が有ったが、ここは、ラジオ製作に詳しい人達が、カウンター付きの対面販売で部品名を云って買うシステムで、初歩の自分には敷居が高かった。 2軒目は元城町の市役所の交差点の南西の角から南へ3~4軒目に「三共無線」が有った。 そこは、商品がガラスケースに陳列して有り、応待もしてくれたので、もっぱらそこへ通った。 さて、部品が揃い、「4球スーパー真空管ラジオ」の組み立てに取り掛かる。 先ず、シヤーシと云うアルミ製の台座に、真空管、トランス、バリコン等の部品を組み込み、付いているコードを裏側に引き込み、コードとコンデンサーを熱した半田鏝(はんだごて)で半田(金属の接合剤にする、錫と鉛の合金:岩波国語辞典より)をペーストと云う潤滑剤と共に説明図を見ながら付けていく半田付けを根気よく続け、1か月程度で完成した。 ラジオを収納する箱は、当時出始めた、薄いべニア板を使い、周波数を視るダイアルの窓は、糸ノコギリで切り作った。 完成はしたものの、果たして音が鳴るかどうか、ハラハラした。 スイッチを入れると、先ず雑音が聞こえ、チューニング(周波数を合わせる事)してゆくと、NHKラジオ第一放送が受信できた。嬉しかった。 「初歩のラジオ」の最新号を読んでいたら、ソニーという東京に有る会社が真空管に替わるトランジスタと云う部品の開発に成功し、発売されたという記事が載っていた。そのトランジスタを2個使って「二石トランジスタラジオ」の作り方も載っていた。作りたくなった。 問題は、トランジスタの値段だ。1個700円する。中学生になって毎月1000円程の小遣いはもらっていたが、とても足りない。兄弟が多いので親にもねだれない。困った。 当時の子供たちは、メジロを始めとして、小鳥を飼うのが流行っていた。 八百屋でリンゴ箱の空き箱を買ってきて、小鳥屋で出入り口の付いた金枠を買ってはめ込み、簡単に鳥小屋を作ることができた。瀬戸物の楕円形の水呑みと餌入れと、藁でできた巣、止まり木を付ければ完成。私も、十姉妹(ジュウシマツ)と桜文鳥を合わせて40~50羽飼育していた。その大半を手放して、トランジスタ2個分の資金1400円、調達できた。 「二石トランジスタラジオ」の作り方は、「真空管ラジオ」と同じで、台座に部品を組み込み、コードとコンデンサーを半田付けし、やはり1か月位で完成した。NHKラジオ第一放送が聞こえた。 持ち運べるようにしたいので水彩絵の具の木製の箱にセットした。 そうして、中三の春から夏休みが終わるころ、一連のラジオ製作が終わった。 和合町在住 KO 記事一覧を見る